緒方は幼少期、いつも鼻水を垂らしていた。
小学生になってもそれは変わらず、近所では鼻タレ大ちゃんと呼ばれていた。
学校の教室には「おがたくん専用」と書かれたティッシュ箱が常に置かれ、ちゃんと鼻水を拭くようにと担任の先生からも注意されていたが、それを気にとめず垂らし続けていた。
おかげで帰りの会では女子に「おがたくんがまた鼻水をたらしていました」と報告される日々。
見かねた母親に耳鼻科へ連れていかれ、診断を受けると蓄膿症の疑いがあると告げられる。
それから毎週となり町の耳鼻科までバスに乗って一人で通った。
小学生低学年の緒方にとって耳鼻科での治療はとにかく辛かった。
鼻の中を塩水で徹底的に洗浄されたのち、薬品が混ざった蒸気を鼻の中に入れ5分くらい我慢した。
治療があまりに嫌で、ときおり母親には耳鼻科へ行ったと嘘をつき、バス代でアイスを買って鼻水を垂らしながら食べた。
ちょうどその頃から耳が悪くなっていたようで、授業で先生が何を言っているのか全く分からなかった。
案の定成績はすこぶる悪く、テストではだいたい0点(のび太くんかよ
通知表には3段階評価で一番下の△がずらりと並んだ。
そんな成績の悪さには定評があった緒方だったが、給食を食べる速さはクラスでピカいちだった。
1秒でも早く食べ終えて、運動場で遊ぶドッヂボールのスペースを確保するためだ。
いただきますと同時にパンを押しつぶし丸のみし、牛乳とおかずで流し込む。
その間約1分強、まさのりとひらちゃんと3人でいつもトップ争いを繰り広げた。
食べ終えると、我先にと教室を飛び出し、階段を駆け下り、他のクラスの誰よりも先に運動場へたどりついた瞬間が最高に心地良かった。
そんな幼少期に培った早食いの能力と耳の悪さが、後にとんでもない惨事を巻き起こそうとは、この時の緒方はまだ知る由もなかった・・・
続く

