若き日の想い

 

27年前、緒方は初めてバイクレースなるものに出場した。

 

オートポリスで開催されているONE&TWOフェスティバルだ。

 

選手権レースではなく、いわゆる草レース。

 

市販車を排気量や気筒数ごとにクラス分けし、個性あふれる改造を楽しめるのが最大の魅力である。

 

緒方の車両はツーリングや街乗りで使用していたゼファー750で、マフラーとリアサスを交換しただけ。

 

出場クラスはBOM-3B、CB-FやGSX750Sなど750ccクラスの空冷マシンが名を連ね、10台近くの参加車両が彩った。

 

初戦の結果は惨敗、うる覚えだが8位か9位だったと記憶している。

 

それからというもの、雑誌を片っ端から読み漁り、カスタムパーツを安く手に入れるためにBGのうりたしコーナーに応募し、タイムを縮めるために皮ツナギを背負ってゼファーでオートポリスに通った。

 

その真っただ中に雑誌で目にした「テイストオブフリーランス」の記事。

 

九州ではお目にかかれないレベルの市販車レーサーに緒方の目は釘付けになった。

 

それから毎月ロードライダーとBGは発売日に欠かさず買った。

 

「俺もいつかは筑波のテイストに出場したい」

 

そんな想いとは裏腹に、当時フリーアルバイト生活にも関わらずバイクの改造費を捻出し、極貧を極めた緒方には筑波遠征など到底夢物語。

 

そしてモタードに出会い、モタードレースにハマり、もうテイストの事など忘れたはずだった・・・

 

 

続く